第33回開催にあたってのごあいさつと作品講評

ごあいさつ

さっぽろ児童版画コンクールは、地元の小売業の集まりである協同組合日専連札幌が市内小学校に作品の出品をお声がけし、開催をしております。
これまでに、札幌市長賞、札幌市教育長賞、また全国児童版画コンクールに選出した作品からは文部科学大臣賞を筆頭に各賞が選ばれております。入選された皆様には、心よりお祝い申し上げます。
今年で第33回開催を迎え、応募総数552点と多数の作品が集まりました。ご協力いただいております札幌市、札幌市教育委員会やご協賛いただいた企業様、そして市内小学校とその指導を担っていただいた皆様には、心より感謝申し上げます。

これからも、素晴らしい子供たちの版画作品を応援してまいりますので、皆様の温かいご支援をお願いいたします。

協同組合 日専連札幌
理事長 岩井 久

作品講評

伝統ある「第33回さっぽろ児童版画コンクール」に今年もたくさんの素敵な作品が集まりました。審査をとおして多くの力作の中から、きらりと個性が光り、豊かな感性に目と心が惹きつけられたのがここに掲載された作品です。皆さんには、今回受賞したことで、自分の作品に自信をもってまた新しい表現に取り組んでいただきたいと思います。

さて、一つ一つの作品を審査するにあたり、特に重視した3つの点について述べたいと思います。
一つ目は、表したいテーマとなる人、もの、出来事などへの感動や作者の思いが伝わってくる作品であることです。
二つ目は、学年に応じた表現方法や素材の組合せ、版の繰り返しなど版表現のよさを生かした工夫が見られる作品であることです。
三つ目は、版画特有の白と黒のバランス、色版画や彫り進み版画にある色の濃淡や重なり、そして丁寧な彫りや刷りなど、誠実に制作に取り組まれた作品であることです。
受賞作品はどれも、それぞれの表したいテーマと丁寧に向き合い、自分と対話しながら楽しく表現されていることが伝わる作品ばかりでした。

札幌市長賞に選ばれた、美しが丘小学校5年、河内 実心さんの作品『静かな水辺』は、彫り進み版画のよさである色の重なりの美しさと刷り分けの巧みさを見事に表しています。存在感のある水芭蕉の白い花たちと背景の緑のコントラストから、題名にある「水辺の静けさ」が伝わってきます。広い面の中に彫り進みながら透かしのように描いた線や、生き生きとした線で彫り込んだ葉の一枚一枚から、木版表現にある個性豊かな素晴らしい表現力を感じます。

札幌市教育長賞、本町小学校3年、落合 香晴さんの作品『きれいなお魚』は紙を主な素材として身近にある素材をうまく組み合わせて、魚の鱗の違いを特徴的に表現しています。梱包材の鱗がきれいなお魚の背中には、一緒に海の世界を楽しむ自分が乗っており、加筆された海の生き物と仲良く過ごす明るい世界観が印象的です。生き生きとした鰭の形や表面の細い筋など、細かな部分もしっかりとした版づくりと丁寧な単色刷りで表現することができました。

この2作品の他にも特別賞受賞作品4点と金銀銅賞、入選、合わせて66点の力作ばかりです。
終わりになりますが、日本の伝統である浮世絵木版画は世界でも高い評価を得ており、木版画の表現は世界に誇れる日本特有の表現方法です。これからも様々な版表現の楽しさにふれ、版を使った表現活動に親しんでいただけますことを心から願っています。

札幌市造形教育連盟
堀口 基一