第34回開催にあたってのごあいさつと作品講評

ごあいさつ

さっぽろ児童版画コンクールは、地元の小売業の集まりである協同組合日専連札幌が札幌市内の小学校に作品の出品をお声がけし、開催しております。

ご応募いただいた作品の中から、北海道造形教育連盟の先生方に札幌市長賞、札幌市教育長賞などをご選考いただくとともに、優れた作品は全国版画コンクールへ応募し、これまでに文部科学大臣賞などを受賞しております。
34回目となります今年は1,027点とたくさんご応募をいただきました。これも、ご協力やご協賛をいただいております札幌市、札幌市教育委員会、ぺんてる株式会社様、そして市内の小学校で版画制作をご指導いただく先生には、心より感謝申し上げます。

私ども協同組合日専連札幌は、これからも児童の版画作品を応援してまいりますので、皆様の温かいご支援をお願いいたします

協同組合 日専連札幌
理事長 岩井 久

作品講評

伝統ある「第34回さっぽろ児童版画コンクール」に今年も千点を超える素敵な作品が集まりました。審査をとおして多くの力作の中から、きらりと個性が光り、豊かな感性に目と心が惹きつけられたのがここに掲載された作品です。受賞した皆さんには、自分の作品に自信をもって、これからも表現することを楽しんでいただきたいと思います。

さて、今回、審査を行うにあたり、特に大切にした三つの点について述べたいと思います。
一つ目は、表したいテーマとなる人、もの、出来事などへの感動や作者の思いが伝わってくる作品であることです。
二つ目は、学年に応じた表現方法や素材の組合せ、刷りの繰り返しなど版表現のよさを生かした工夫が見られる作品であることです。
三つ目は、版画特有の白と黒のバランス、色版画や彫り進み版画にある色の濃淡や重なり、そして丁寧な彫りや刷りなど、誠実に制作に取り組まれた作品であることです。
受賞作品はどれも、それぞれの表したいテーマについて、自分と対話しながらいろいろな工夫を凝らし、表現されている作品ばかりでした。

札幌市長賞に選ばれた、本町小学校3年、小中 望結さんの作品『みんな元気に泳ぐ』は、モールやエアキャップなどの身近にある素材の特徴を生かした版によって表現されています。梱包材の鱗や重なりのあるモールの海藻が版独特の表し方になっています。また、一緒に泳ぐ魚やヒトデをクレヨンで加筆し、海の中の楽しさを伝えてくれます。
また、札幌市教育長賞に選ばれた、白石小学校5年、新見 陽菜さんの作品『池の主と白い花』は彫り進み版画の特徴を生かした色の重なりや刷り分けに個性が光る作品となっています。濃淡のある青い池に棲む池の主は、白と黄色の絶妙な重なりやずれによって効果的に表され、画面上部の白い花との美しいコントラストをつくっています。物語が聞こえてくるような雰囲気のある画面構成と版づくり、そして彫り進みながらの丁寧な刷りが素晴らしいです。
この2作品の他にも特別賞受賞作品4点と金銀銅賞、入選、合わせて74点の力作ばかりです。

終わりになりますが、日本の伝統である浮世絵木版画は世界でも高い評価を得ており、木版画の表現は世界に誇れる日本特有の表現方法です。これからも様々な版表現の楽しさにふれ、版を使った表現活動に親しんでいただけますことを心から願っています。

札幌市造形教育連盟
堀口 基一